一編の詩を小冊子にし、それを展示空間の中心とした。

 

2007

 

Reason for Absence  不在の理由

 

 

かつて 期待を抱かせた ものたちが

仮面を被ったまま 顔を出し渋る

鼻先をかすめ 背景に身をひそめる

 

不埒に隙間を 見せつけて

誘っているのか いないのか

 

 

    A Window

 

空白が゜擁護されていた建具から

終始無言で 流れ出し

けして 足音など 響き渡ることもなく

湿度と 温度を

たっぷり持ち合わせた 訪問者が

沈滞した空気を

不安に掻き回すこともない

 

 

    A Drawer

 

掛けがねは 意図せず

降り積もる 塵と

浸食する 時に 

震えている

忘れた筈の 胸騒ぎを 真似て

心 ざわつかせるつもりもないのに

 

 

    A Door

 

かつて 必要であった 口実たちが

裏腹な動きで とぐろを巻き

開き損ねた 扉を

真綿の柔らかさで

ひっそり 締め上げるのだ

乾いた 風が あざ笑い

顔色変えずに 通り抜ける

 

 

 

 

 



引き出し棚に詩の冊子

W95 H120            12頁


小冊子を発行、その詩の中の世界が展示のテーマそのものになる。

 

2008

 

嘯く庭

W120H120 23頁