わたしにとって「かたちの為の詩篇」は推敲を重ねることで作るべきイメージの具体的な要素を固めていく過渡的な、デッサンにおける習作のような位置にある。
その双方を摺り合わせながらかたちが出来上がる。
2005
透過するもの・しないもの
真白い四角に於いて
透過するもの
やや傾斜した綿の感触
あるいは、無色の共鳴を蓄えた棒切れ
幾多のわななきを空かして
満ル 溌ル
錯綜する
横へのわたし
真白い四角に於いて
透過しないもの
戦渦の悲鳴はこめかみへ
層をつくって降り積もる
曇り硝子はただ生暖かく
空気は整然と上っ面を滑り込む
所在の塊は淀みをつくり
微かな粘りの澱を残す
錯綜する 縦
の
わ
た
し
2006
抜殻のちから
不動であるべき その物質は
滑らかで 大きなうねりの螺旋で出来ており
つたう音のさざめきは 躊躇することなく
始まりと終わりで 交差する
より糸は絡まり 解かれぬままに 延々と
追いかけっこを 繰り返し
疑問符だらけの 畝をつくる
終わりは始めの時を 始めは終わりの時を
おなじ空間で 感じるのだ
互いの尻尾の幻影を 目の前にして
「螺旋にぶら下がる 孤独な抜殻は 不動に対する 運動です」
「垂直に落下する 行動です」
「つよい 強い 抜殻です」
「虚無の膨らみを抱え 発芽の予感でいっぱいの 無数の螺旋の中で」
「なおも 直下し続けるものです」
起こる筈のない 発芽は
かわされた思いを 幾重にもつらね
ある筈のない 時を刻むのだ
あの時と その周辺との 切れ目ない時を 孕みながら
最初が終わりを 追いかけて
終わりが最初を 追いかける